第一回「あかりサロン」実施報告

 東京支部の新規事業である、第1回「あかりサロン」が、2009年7月15日(水)に開催されました。今回はタルジェッティ ポールセン ジャパン社のショールーム(港区六本木)をお借りし、北欧照明器具のフォルムがより美しく映える、薄暮を迎える頃の17時より、19名の参加者を迎えて開催されました。
 参加者の内訳は、デザインや建築を学ぶ大学院生と大学生、照明を学ぶ専門学校生が主流で、かつ女性が圧倒的に多く、参加者の過半数以上(約74%)を占めていたのが特徴です。(図1参照)


図1 参加者の内訳

 「あかりサロン」は、これまでの東京支部主催による諸行事時に、参加者の方々から寄せられた「参加者の声」の中から、特に若い方々からのご希望が比較的多かった、「デザイン系のセミナーや見学会の企画を…」のご要望にお答えし、この度の実施に至りました。
 プログラムも、単なるショールーム等の見学会だけで終らぬように趣向を凝らし、社交的集会をイメージした「サロン」形式を執り入れました。
 記念すべき、第1回目の「あかりサロン」の企画では、シンプルで、ユーモアがあり、どこか暖かく、何よりも人に優しいデザインが特徴である「北欧デザイン」を採り上げ、昨今、彗星の如く登場した新進気鋭の女性デザイナー「ルイーズ・キャンベル / Louise Campbell」と、「近代照明の父」と称される巨匠「ポール・ヘニングセン / Poul Henningsen」の個性ある2人のデザインをテーマに、プログラム編成も、第1部「基調講演」と第2部「あかりサロン」の2部構成といたしました。

 第1部では、高橋 亜須未(タルジェッティ ポールセン ジャパン(株)) 氏より、「ルイーズ・キャンベル vs ポール・ヘニングセン −デンマークの2つの個性−」と題した「基調講演」が、60分ほど行われました。ご講演の内容は、ルイーズ・キャンベルとポール・ヘニングセンの2人の人物像に始まり、言葉(名言)、デザイン・コンセプト、代表作品(未発表も含む)、2人の製品を使ったプロジェクト事例の紹介、そしてルイーズ・キャンベルの新作の紹介と、幅広く、多岐に渡るボリュームのある内容でした。参加者は、高橋 亜須未 氏の美しいビデオ映像を交えたビジュアル・プレゼンテーションと絶妙な話術に聞き入り、60分の講演があっという間に過ぎ去りました。

 「基調講演」を終え、小休憩を兼ねて、支部側で用意した軽食と飲み物で、先ずは小腹を満たし、喉をうるおし、その後、第1部「基調講演」の中で紹介された幾つかの照明器具の素晴らしさを実体感する「照明実験」を見学しました。参加者は、配光制御、グレア制御など、照明器具の光学特性の素晴らしさを目の当たりに見て、デザインとテクノロジーの融合に感嘆しておりました。

 「照明実験」の後は、待望の「あかりサロン」のひとときで、参加者は、お目当ての北欧照明器具を、早速、写真に収めたり、間近に見て、触れたり、また講師を務めた高橋 亜須未 氏やタルジェッティ ポールセン ジャパン社のスタッフに個々の質問など、思い思いに、北欧照明器具の素晴らしいデザイン、素材の特質を生かした「光の造形美」に酔いしれておりました。(図2参照)


図2「あかりサロン」の様子

(クリックで拡大表示できます。)

 熱心な参加者からの要望に応え、予定の閉会時刻も30分ほど延長され、夕刻20時を迎えると、北欧照明器具の美しいフォルムとあかりの世界を間近に見て、触れた「感動」をお土産に、そして第2回「あかりサロン」の企画に期待を寄せ、散会しました。

 本実施報告の文末には、「あかりサロン」の開催後に、照明学会東京支部事務局宛に寄せられました、幾つかの「参加者の声(感想文)」を掲載いたします。公私共にお忙しいところ、貴重なご意見を賜り、ありがとうございます。照明学会東京支部事業企画委員会では、皆様方からの声を反映した、第2回「あかりサロン」の企画とその実施の具現化に向けて、委員会メンバー一同、日々鋭意努力しておりますので、ご期待願います。

 最後に、この度の第1回「あかりサロン」では、共催いたしました光環境研究専門部会には、PRにおいてご尽力を賜りました。さらに、タルジェッティポールセン ジャパン社のスタッフの皆さまには企画から実施に至り、講師のご推薦、会場並びに配付資料のご提供等々、多大なご協力とご支援を賜りましたこと、深く感謝の意を表しますと共に厚く御礼申し上げます。

「あかりサロン」参加者の声

1.大森電機工業(株) 嘉代 憲司 氏 

『... 中でも一番印象に残っているところは、PHシリーズの照明器具にてランプ・シェードを外し、光源のみの状態で顔を照らした際に見える顔の印象と、ランプ・シェードを一枚ずつ取り付け、変ってゆく顔の印象が、ただ物を照らすだけのものではなく、人、空間、心を、美しいフォルムで世界を作り上げていることを学ばせて頂きました。...』
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 先ずははじめに、今回の記念すべき第1回「あかりサロン」に参加させ頂きありがとう御座いました。また、講師 高橋 亜須未 様及び会場を提供して頂きました、タルジェッティ ポールセン ジャパン(株)様、ならびに(社)照明学会 東京支部の関係者各位様への感謝の気持ちをご連絡させて頂きます。

「第一部:北欧の光文化、照明デザインについて」

 北欧の光文化につきましては、必要な場所に必要な量の照明を設け空間をデザインしていることが昔から現在まで変わらず文化として根付いていることを教えて頂きました。
デンマークの住宅における部屋の照明の使い方と日本での照明の使い方の違いに照明に対する文化(意識)の違いを実感致しました。
照明デザインにつきましては、特にポール・ヘニングセン氏の細部まで計算された設計理論がベースにありさらに数十年たった現在でも輝き続けるデザインに心を打たれました。
また、光源がどの角度からも見えずグレアを抑え照明を使用する人を一番に考えておりさらに、ランプ内で反射する反射面へ着色することにより照明全体に柔らかさを織り交ぜ作り出す空間に照明としてのデザインを感じました。

「第二部:美しいフォルムとあかりの世界を実感して」

 実際に各デザインの照明器具に直接触れ、照明の広がり、強さ、指向性を体感させて頂きました。
 中でも一番印象に残っているところは、PHシリーズの照明器具にてランプ・シェードを外し、光源のみの状態で顔を照らした際に見える顔の印象と、ランプ・シェードを一枚ずつ取り付け、変ってゆく顔の印象が、ただ物を照らすだけのものではなく、人、空間、心を、美しいフォルムで世界を作り上げていることを学ばせて頂きました。
 最後に、これから照明デザインについて学びたいと思っている人、照明に興味がある人に、より深く照明を学びたいと感じるこのようなセミナーを幅広く開催して頂くことを希望致します。

大森電機工業(株)
技術部 開発第四課
嘉代 憲司
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2.日本大学大学院 電気電子工学専攻 三石 明彦 氏

『... 基調講演の中で、問いかけられた「何よりも、人間のためのデザインであるべき。」というデザイン理念は、私だけではなく、将来、デザイナーを志そうとしている「あかりサロン」に参加した多くの方々の心に残る「大切な言葉」だと思います。今回の第1回「あかりサロン」に参加して、本当によかったです。...』
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 東京地区の梅雨が明けて早々の蒸し暑い7月15日の夕暮れ時から、六本木のタルジェッティ ポールセン ジャパン(株) のショールームにて開催された、照明学会東京支部主催、第1回「あかりサロン」に参加させて頂きました。
 参加者らの主流は、デザイン系の女子大生らと思われる若い女性の方々で、北欧デザイン、北欧照明器具に対する関心の高さが伺えました。
 当日のプログラムは、「基調講演」と、講演後の休憩を挟んで催された「サロン(軽飲食付き)」の2部構成になっていました。
 第1部では、「ルイーズ・キャンベル vs ポール・ヘニングセン −デンマークの2つの個性−」と題して、講師 高橋 亜須未 氏による、2人の照明デザイナーらのデザイン・ポリシーや名言、2人の作品についての解説がありました。ヘニングセン氏の「PHランプ」が、如何にして創られ、どのような配光特性を持つのか、また、キャンベル氏の「自然」という一貫したデザイン・ポリシーなど、照明デザインという観点において非常に興味深いお話しを聞くことができました。
 さらに、屋内照明手法に関する興味深いレクチャーもあり、照明器具の配置の違いによる照明効果による空間イメージの変化、明るさの分布に不均一性を持たせることによる空間的広さの演出手法など、非常に参考になる内容でした。
 基調講演後には、照明器具を実際に用いた実験形式で、さらに詳しい説明を受けました。
例えば、照度計を用いたランプ・シェードの取り付け枚数と被照面照度の相関性に関する実験(...光学設計が成されたランプ・シェードの取り付け枚数を増やすと、被照面照度がアップする)、普段は見ることができない照明器具の内部構造について(...自然な光の色味、演色性の向上のため、照明器具内部の反射板が、赤色と青色に彩色されている)、ランプ・シェード素材の内面処理(...不快な反射グレアをなくすため、ランプ・シェードの内面(裏面)には、フロスト加工処理が施されている)などが挙げられます。
 これらは、ショールームにて、照明器具の外観デザインだけを、ただ単に眺めていただけでは、到底、知り得ることができない技術的な細部事項の解説であり、北欧照明器具の数々が、ただ見た目だけの上辺の美しさだけではなく、如何に光学的デザイン、工学・技術的な工夫が成されてされているかを理解することができた、貴重な経験でした。
 第2部は、サロン形式で、参加者らが、思い思いに、お目当ての美しい北欧照明器具の写真撮影、個々の質問など、講師 高橋亜須未 氏との懇談のひとときを過ごしました。
 私は、複雑なランプ・シェード構造を持つ「PHランプ」「アーティチョーク」のランプ保守や交換方法について質問をさせていただきました。その答えは、「照明器具本体(ランプ・シェードの構造体)の内部に、ランプが宙吊りの状態で保持される機構なので、ランプ口金部の固定ロックを外し、引き上げるだけの簡単な作業で対処できます。」と、実演を交えて丁寧に説明をして下さいました。その間、終始、笑顔で対応をして下さり、講師 高橋亜須未 氏の気さくなお人柄を感じました。
 今回の「あかりサロン」では、エンドユーザーに末永く使用して頂く照明器具の開発において、意匠設計、構造設計(頑丈さだけではなく、製造工程における造り易さも含まれる)、保守・管理機構の大切さ、加えて、心地よい生活空間の演出手法について、数多くの知識を得ることができました。
 基調講演の中で、問いかけられた「何よりも、人間のためのデザインであるべき。」というデザイン理念は、私だけではなく、将来、デザイナーを志そうとしている「あかりサロン」に参加した多くの方々の心に残る「大切な言葉」だと思います。
今回の第1回「あかりサロン」に参加して、本当によかったです。第2回「あかりサロン」にも、是非、参加させて頂きたいと思います。
 最後に、「あかりサロン」の会場を提供して下さいました、タルジェッティ ポールセン ジャパン社ならびにスタッフの皆様方、基調講演の講師を務められました 高橋 亜須未 氏、そして今回の素晴らしい企画を立案、主催して下さいました(社)照明学会 東京支部の関係者各位に、厚く御礼申し上げます。
有難う御座いました。

日本大学大学院
電気電子工学専攻 2年
三石 明彦
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3.東京都市大学大学院 建築学専攻 後藤 侑希 さん

『... 将来、モノや空間を創って行くであろうと思う私自身にとって、大変、大きな収穫であったことは間違いありません。「あかり」というテーマから「照明」という分野の枠を超え、様々な体験的理解を通して、「デザイン」という大きな世界の魅力を改めて感じ取り、かつ新たな一面を発見することができた、とても素敵な「あかりサロン」でした。...』
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 この度、参加させて頂きました、照明学会東京支部主催の第1回「あかりサロン」では、巨匠 ポール・ヘニングセン 氏の手により生み出された「PHランプ」のデザインから、新進気鋭のデザイナーとして世界で注目を浴びている ルイーズ・キャンベル 氏のデザインに対する考え方などを通して、「人のための良いデザインとは何か?」を、様々な切り口と視点で講義(第1部 基調講演)の中に盛り込んだ、とても内容の濃いプログラムでした。
 先ず、PHランプの特徴を、設計者のデザイン・プランの意図や、さらにそれを実現させるための光学制御の仕組みを実際の作品を通して理解することができました。
説明用に用意された模型は、設計者の意図した「眩しくないあかり」を実現させるための光学制御の仕組みを、参加者が実視しながら、かつ「あかりの質」を感じ取りながら体験的に理解できるようになっているその仕組みの明快さと、抜群の視覚的効果を目の当たりにし、デザインとテクノロジーの融合の必要性を実感しました。
 さらに、講演が進み、ルイーズ・キャンベル 氏のデザインに対する考えの説明の中では、「イイ(良い)と思うものには訳がある。」という考え方を、様々な事象や事例を通して解説していただきました。その解説に使われた事象や事例は、私たちが、普段経験するような何気ない瞬間をとらえた画(風景や光景)を徹底的に解析し、何故、それを良いと思うのか、その仕組みを詳細的に解説しいただきました。講師の 高橋亜須未 先生の講演は、言葉(専門用語)のひとつひとつがとても分かり易く、あたかも「五感」を通して、同じ共通感覚を体に受けながらお話しの内容が感じ取れる巧妙な話術で、知識が体の中にどんどんと沁み込んで行くような、とても魅力的なプレゼンテーションでした。
 かつて人間が、「暗」の世界から人工的に「明」の世界を生み出したその瞬間から、私たちは「明」の部分だけでなく「暗」という一面の存在も認識し、かつ同時に楽しんでいると思います。「暗」があるからこそ「明」の良さが成立する訳です。
 すなわち、「明」と「暗」という、その対極する2つ世界を通して、私たちは豊かな感性を得ているのであるならば、その関係性がとても重要になってくると考えます。
私は、今回の「あかりサロン」に参加して、この発見をしました。将来、モノや空間を創って行くであろうと思う私自身にとって、大変、大きな収穫であったことは間違いありません。「あかり」というテーマから「照明」という分野の枠を超え、様々な体験的理解を通して、「デザイン」という大きな世界の魅力を改めて感じ取り、かつ新たな一面を発見することができた、とても素敵な「あかりサロン」でした。
 ありがとうございました。

東京都市大学大学院
建築学専攻 1年
後藤 侑希
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4.日本大学生産工学部 創生デザイン学科 金井 友美 さん

『... 今回の「あかりサロン」では、美しいランプ・シェードや、照明が生み出す光のコントラストと色味など、今まで目にしたことがなかったような「美しいあかりの世界」の数々を、多数紹介して頂きました。何よりも衝撃を受けたのは、光の光学的制御(デザイン)次第で、十分な光量を確保したままで、不快な「グレア」を無くせることの理論的解説とその実験でした。...』
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 私は、現在、大学でデザイン系の勉強を始めたばかりの学生です。まだ、自分のデザイン・フィールドを、特定の分野に決めてはいないのですが、「良質なデザインを見てみたい。」、「デザイナーの仕事をひとつでも多く知りたい。」と思い、今回、照明学会東京支部主催の第1回「あかりサロン」に参加させて頂きました。
 今回の「あかりサロン」では、美しいランプ・シェードや、照明が生み出す光のコントラストと色味など、今まで目にしたことがなかったような「美しいあかりの世界」の数々を、多数紹介して頂きました。何よりも衝撃を受けたのは、光の光学的制御(デザイン)次第で、十分な光量を確保したままで、不快な「グレア」を無くせることの理論的解説とその実験でした。「あかりサロン」に参加する以前は、自宅にある食卓のペンダントや机のスタンドの強すぎる光は、必用な明るさを得るためには止むを得ないことだと思っていました。むしろ、第1部の講演を聴くまでは、自分が、日頃、「強い光に不快感を抱いていたこと」そのものに気づいていなかったように思います。
 第1部の講演では、巨匠 ポール・ヘニングセン 氏は、不快なグレアを除きつつも、必要な場所には光をきちんと届けるための照明器具デザインの探求を、生涯のライフワークとしていたこと、ヘニングセン氏がデザインした「PHランプ」は、独特のフォルムのランプ・シェードを3枚組み合わせた特徴あるデザインで、どこか愛嬌のある顔(フォルム)をしていますが、その見た目以上に、対数螺旋の軌跡から造られた3枚のランプ・シェードは、光の配分を完全に制御する光学的機能を持っていること、そして何よりも生み出された間接光をより心地の良い光にするための工学的、技術的なお話しに、圧倒されました。
 対して、ルイーズ・キャンベル氏の照明デザインへの取り組みは、多少のグレアがあっても「美しいあかり」を創り出しています。グレアを光の強弱表現のひとつであるようにデザインされた3枚のランプ・シェードはどれも可憐で遊び心に溢れています。キャンベルの作品の数々を見て、「自分も、将来はデザイナーになって、楽しさ(遊び心)と美しさを持ち合わせたデザインの提案をしたい。」と強く憧れました。
 今回、講演の中で紹介された2人のデザイナーは、照明デザインにおけるアプローチには異なる個性がありました。しかし、心地よい「良質の光」と、より良いプロダクトを生み出すという「デザイン・ポリシー」は、全く同じだと感じ取りました。個性のある2人の各々のデザインには、機械的に作られた無機質な「光」ではなく、人の手によって創られ、家々に灯される団欒の「あかり」という表現がぴったりです。
 加えて、どんなに優れた良質な「あかり」でも、その空間にどのように配置するかが重要なポイントで、空間に奥行き感を与えるには、複数の灯りを効果的に配置するデザイン手法があることも学びました。
 第2部の「サロン」では、講師の 高橋亜須未 先生と、直接、お話しすることができました。さらに、北欧照明器具を間近で見て、何よりも自分手で直にその美しさに触れることができたので、デザインを学ぶ学生として最高の機会であり、大変勉強になりました。
 照明デザインに限らず、あらゆるプロダクトは、何もなく、かつ誰も居ない場所に、単にぽつんと置かれる訳ではありません。そこには、必ず何かがあり、誰かが居て、何よりもその人の生活空間と時の流れがあります。今回の「あかりサロン」に参加し、もっと多くのことを見聞きし、自分の視野を広げて、大きく成長して行きたいと感じています。求められるプロダクト・デザイナーを目指して…。

日本大学生産工学部
創生デザイン学科 1年
金井 友美
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5.日本大学生産工学部 創生デザイン学科 立田 千尋 さん

『... 日頃の生活空間の中で身近な存在である照明器具は、自分が想像していた以上に奥が深いプロダクトだと感じさせられました。北欧のデザイナーらが追い求めているデザインの美しさとは、単なる芸術的な「美」の探究ではなく、「使う人の立場で考えたシンプルで機能的なデザイン」と「その機能性が生み出す美しさ」というお話しに感銘しました。...』
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 今回、照明学会東京支部主催の第1回「あかりサロン」に参加させて頂きまして、ありがとうございました。
 大学で受けているデザイン系の講義や専門書を通して学べるデザインの基礎知識とは違う、プロダクトの見方、そのデザイン性の捉え方や感じ方を知ることができ、とても貴重な経験ができました。さらに、日頃の生活空間の中で身近な存在である照明器具は、自分が想像していた以上に奥が深いプロダクトだと感じさせられました。
 北欧のデザイナーらが追い求めているデザインの美しさとは、単なる芸術的な「美」の探究ではなく、「使う人の立場で考えたシンプルで機能的なデザイン」と「その機能性が生み出す美しさ」というお話しに感銘しました。
 さらに、部屋を照明する場合、ムラ無く均質に明るく照らし出すのではなく、生活の各シーンにおいて照らし方や明るさのレベルを少し変えることによって全く違った雰囲気の部屋が創り出せることや、部屋の対角線上に間接照明を2つ置くだけの照明手法で、その部屋を実際よりも広く見せることができることなど、興味深いお話しが沢山ありました。
 私は、今回の「あかりサロン」に参加して、日本の照明器具デザインとは一味違う北欧照明器具デザインの世界に深く興味を持ちました。
 それ1つで手元だけを明るく照らし出す照明器具、家族が集まる食事のシーンで用いると良い、光源の強い光が直接目に入らず、ぼやっとした淡いオレンジ色の間接光が、人の顔を綺麗に見せ、そしてお料理を美味しく見せる照明器具、置くだけで部屋の周りを間接光で優しく照らし出すと共に、天井にもやわらかいあかりを反射させる照明器具、カット柄が、1枚1枚、違う3枚のアクリル製のランプ・シェードを重ね合わせることにより、光と影により生み出される木漏れ日のような情景と、その深みある立体的なフォルムが特徴である照明器具、…と、単に照明器具の意匠だけでなく、その照明器具が使用される様々なシーンも視野に入れ、プロダクト・デザインが考えられていることに、とても感動しました。
 第1部の講演は、今まで「照明の色と明るさだけを変えるだけで、部屋の雰囲気は簡単に変えられる。」と思っていた私にとって、とても考えさせられる部分が多く、心惹かれる魅力的なお話しが満載でした。
 さらに、サロン形式の第2部のプログラムは、北欧照明器具デザインに詳しい講師の 高橋亜須未 先生から直に、北欧照明器具のデザイン性、機能美、光学特性などの詳しい説明を受けることができたことに加え、北欧照明器具を直に見て、触って、その美しさを実体感することができたので、デザインを学ぶ学生として良い機会であり、大変勉強になりました。
 第2回「あかりサロン」の企画を、今から楽しみにしております。

日本大学生産工学部
創生デザイン学科 1年
立田 千尋
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