第27回照明学会東京支部照明フォーラム開催報告
「ワタシ つなぐ ヒカリ 〜光の可能性」

 第27回照明フォーラムが2016年11月16日(水)、日本大学理工学部駿河台キャンパス1号館CSTホールにて開催されました。テーマは「ワタシ つなぐ ヒカリ 〜光の可能性」です。

 わたしたちのまわりの光環境は、今大きなフェーズを迎えています。照明技術・ITの革新的な飛躍により様々な分野の枠を超えた体験が可能となった一方、震災をきっかけに光のあり方が再考されつつある他、現代が抱える問題も多々あります。今回は、成熟した技術とさまざまな環境が入りまじった「今」だからこそ、光ができることとは一体何なのか、人の体験を軸に、人と人、人とまち、人と未来をつなぐような光についてクローズアップしました。

 最初に委員による企画の発表、その後分野の異なる3名の講師をお招きし、それぞれの分野における「ワタシ つなぐ ヒカリ」についてご講演いただきました。

 委員による企画では「ワタシつなぐ東京」と題し、4年後にせまった東京オリンピック・パラリンピックに向けて東京と世界を「つなぐ」まちあかりの提案を行いました。前半では各地の光イベントのリサーチを行い、私たちが目指すべきまちあかりとしての必要な要素を考察しました。後半では、リサーチ結果を元に、東京のまちあかりとして「トーキョーオリガミライト」を提案し、システムや実際に街中に展開したイメージパースを紹介しました。今回はパンフレットにもオリガミライトの折図を載せ、休憩時間中に観客の方々が実際にオリガミライトを作成して体験できるという趣向も凝らしましました。

 続いて各講師による講演を聞いて頂きました。

 講師講演1は三城 賢士氏(竹あかり演出家/ちかけんプロダクツ取締役)です。メインプロジェクトである竹あかりの紹介を中心に、人と地域、人と人を「つなぐ」光についてお話頂きました。ご自身の活動のルーツとなった学生時代の「うすき竹宵みずあかり」での経験から最新の「TAKE Peace Project」まで、「地域の人々と一緒に、そこにしかない風景”物語”をつくる」という一貫した強い理念が感じられるご講演でした。

 講師講演2は大屋 友紀雄氏(プロデューサー/クリエイティブカンパニーNAKED Inc.)です。5分程度の紹介映像から始まり、デジタルプロダクツ第一世代として映像技術の変遷を辿りながら、ショートフィルムからプロジェクションマッピング、映像による空間そのものの演出へと発展していった経緯をお話頂きました。光は科学かアートか?とういう問いに対する「人間の営みがアートであり、人が関わった光はアートでもありサイエンスである」という答えが非常に印象的でした。

 講師講演3は内田 まほろ氏(キュレーター/日本科学未来館 展示企画開発課長)です。「伝えるための光 Lighting in a Museum」と題し、最も長い時間軸を扱う場所であるミュージアムにおけるライティングが、従来の作品を照らすものからライティングが空間の主役となり、やがて体験そのものに照明の力を借りるようになったというお話を伺いました。「光とは人間が生きていく希望」という、技術面だけでない新たな光の可能性を感じさせるお話でした。

 小休憩を挟み、最後は三人の講師のよるフリートーク。「仕事のなかで大切にしている事」「東京オリンピック」「一番印象に残っている光の景色」「お金」など、バラエティに富んだ9つのキーワードからお題を選択してそれぞれお話して頂きました。分野がまるで違うお三方ならではの三者三様のお話と、普段なら聞けないような裏話なども数多くお伺いすることができ、質疑応答のコーナーも含め非常に盛り上がりを見せました。

 今回のフォーラムでは、何かを「つなぐ」ような光の可能性をテーマに、扱う光そのものも光に対する捉え方も異なるお三方にお話し頂きました。普段は交わることがないように思える方々でしたが、光の原体験や光への姿勢など多くの共通点があり、それぞれが魅力的な交わりを見せていました。お越し頂いた皆様は学生、建築・建設業者の方が主でしたが、ご自身の分野に留まらない光の可能性について新たな発見が生まれたのではないかと思います。

 照明フォーラム企画委員会では、今後も時代に即したテーマを取り上げていきたいと思います。来年度も是非ご期待ください。なお今回のフォーラムに残念ながらご参加いただけなかった方にも、委員企画「ワタシつなぐ東京」の動画をアップしました。併せてご参照ください。

YouTube(別ウインドウ):照明フォーラム2016 委員企画


委員企画①(リサーチ)


委員企画②(トーキョーオリガミライト)


フリートーク風景


講師の方々とフォーラム委員

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