第29回照明学会東京支部照明フォーラム実施報告
「Light Magic ~ヒカリの不思議~」

 第29回照明フォーラムが2018年11月9日(金)、SLACK BOX SHIBUYAにて開催されました。テーマは、「Light Magic ~ヒカリの不思議~」。

 今、ヒカリを使った新しい演出や作品がつぎつぎに生まれ、人々の心をつかんでいます。ヒカリには、「見るために照らす」だけではない不思議な力があります。そんなヒカリの力を引き出す「最先端の表現」と、「人がそれを捉えるしくみ」という2つの視点からヒカリの新たな可能性を探るため、二人のプロフェッショナルをお迎えしました。

 最初にご講演いただいたのは、(株)ライゾマティクス代表取締役の齋藤精一様です。

 これまでに手掛けられた数々の作品のご紹介と、それらの作品を作り上げていった工程などについて、実際の作品の映像を交えながらお話しいただきました。
携帯会社と共同で製作したアーティストの演出。様々なデータを使用し、過去に起こったことをもう一度同じ場所に甦らせる試み。ショッピングセンターの通路やエントランスの演出。美術館に出展されたインスタレーション作品。2015年にグッドデザイン賞を受賞された「インタラクティブLEDバスケットコート “ナイキ ライズ ”ハウス オブ マンバ” 」など・・・。

 今回の照明フォーラムのポスターの掲載作品についてもご紹介いただきました。人の脳波の測定結果によってカーテンが動くという演出を実現された作品で、カーテンがゆっくりと動く様子を動画でご紹介いただきました。

 また、作品を作られる時には、ご自身が良いと思うものや、好きだと思えるものについて構想を練り、作り上げるようにしていると話されていました。(株)ライゾマティクスを立ち上げたきっかけについて、自身の好きなものを作ることを仕事にできたら、と考えた、とお話しされていたことがとても印象に残りました。


ライゾマティクス・アーキテクチャー、齋藤様の手掛けられた作品事例
インタラクティブLEDバスケットコート
(2015年グッドデザイン賞受賞)

 

 
ライゾマティクス・アーキテクチャー、齋藤様の手掛けられた作品事例
脳波に反応して動くカーテン(集中すると閉まる仕組み)

 

 
ライゾマティクス・アーキテクチャー、齋藤様の手掛けられた作品事例
「パワー・オブ・スケール」
六本木ヒルズ森美術館「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」

 

 続いて、東京大学大学院総合文化研究科准教授の本吉勇様にご講演いただきました。

 視覚・知覚に関わる仕組みについて、視覚に関わる生物の進化のお話や、これまで研究された内容をお話しいただきました。

 視野・視覚の情報処理に関わる領域というのは、人間の脳の大半を占めていて、人間は目から得ている情報に加えて、過去の経験や心理の情報も同時に処理して判断をしている、とお話されました。つまり、視覚的に得られる画像を、脳が統計的に処理し、判断しており、本吉先生は、それらの統計量を定量化する研究をされていて、ご講演では、それらの統計の分析方法と、分析結果の例についてご説明いただきました。

 具体的には、物の凹凸、質感、透明度の推定、色の捉え方、太陽光や照明が視覚に与える影響と効果、光による美術への影響、美醜を決定づける要因、など。脳が行っている視覚情報の処理の仕組みに繋がる原理を、画像統計量の考え方を用いて詳しく学術的に説明していただきました。

 ご講演中には、マジックのような錯覚現象のいくつかを、プロジェクターに写して再現していただきました。会場の参加者の中には、錯覚に騙される感覚を実際に体験して、思わず驚きの声を上げる方が数多くいらっしゃいました。


東洋と西洋の絵画様式の違い。気候による光環境の違いが影響している。
(左:西洋絵画、 右:東洋絵画)

 


東洋と西洋の光環境が与える物体の見え方への影響
(上:西洋、 下:東洋)

 


表面の統計情報操作によって表面の質感を変えた画像例

 

 質疑応答の時間には、御二方へ「AI、ロボットへの適用」や「オリンピックでの技術演出提案や展望」などについて、活発に質問が挙がりました。

 後半のパネルディスカッションの部では、実行委員で用意させていただいたトピックについて、御二方に自由に選択していただく形式のディスカッションにしました。

 お二人は、「発想の源」、「未来へつなぐ技術」、「照明の可能性」、「建築空間への応用」の4つを選択されて、それぞれのお考えをお話してくださいました。

 最後に、講師の御二方にご協力いただいて、会場の参加者が自由に質問や名刺交換ができる時間を設けました。和やかな雰囲気の意見交換会になるよう、実行委員で、簡単なお茶とお菓子も用意しました。

 多くの参加者の方が意見交換会に参加されて、終了時間のギリギリまで講師の方を囲んで、お仕事に関わる質問や、ご講演内容についての質問をされていました。参加者同士の会話も弾み、有意義な意見交換の場となりました。

 最後になりましたが、参加いただいた皆様、講師の齋藤様、本吉先生をはじめ関係者の皆様のご支援とご協力に感謝を申し上げます。

 照明学会東京支部では、引続き世の中の様々なトピックにアンテナを張り、新しい切り口で照明や光について考えるイベントを企画してまいります。

 今後も、イベントへの参加をお待ちしております。

照明フォーラム委員会 記

 


開会挨拶 フォーラム企画委員長 浦田 幸江


(株)ライゾマティクス代表取締役 齋藤 精一様


東京大学大学院総合文化研究科准教授 本吉 勇様


パネルディスカッションの様子


パネルディスカッションの様子 


閉会挨拶 照明学会東京支部長 安田 丈夫  

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